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破産における従業員への対応

​会社や個人事業主が破産する場合、雇用している従業員にはどのように対応していけばよいのでしょうか。

1. 解雇のタイミングと手続き

会社や個人事業主は廃業にあわせて雇用している全従業員(正社員、アルバイト、パートを含みます)を廃業当日に即時解雇するのが一般的です。
従業員に対してあらかじめ解雇することを予告してしまうと、廃業前に従業員から関係者(債権者や取引業者など)に情報が伝わってしまい大きな混乱が生じるおそれがあるからです。

従業員へ即時解雇を通知する際には、従業員の理解が得られるように、破産申立てに至る経緯や今後の手続きの流れなどを丁寧に説明する必要があります。

また、解雇を通知したことを明らかにするため、即時解雇を言い渡す際に解雇通知書を渡したうえで受領書に署名をもらっておきましょう。

2. 健康保険証の回収

従業員は、解雇により社会保険の被保険者資格を失うので、当該事業所が加入している健康保険の被保険者証(健康保険証)を、従業員から被扶養者分を含めて回収する必要があります。

3. 解雇予告手当、未払い給与などの支払いについて

従業員を即時解雇する場合には、法律上は給料1ヶ月分の解雇予告手当を支払う必要があるほか、未払給料・未払退職金があればその支払義務もあります。
これらは法律上、労働債権として優先するため、手元にお金が残っていれば、即時解雇の際に従業員に対して全額を支払っても全く問題ありません(従業員は、毎月の給料を見込んで家計をやり繰りしていることからすれば給料などを支払うための原資を捻出・確保しておくことが望ましいといえます)。

これに対して、会社や個人事業主に解雇予告手当などを支払うだけの資力がなかった場合には、従業員にこれらの債権を破産手続きの中で届け出てもらい、破産手続きの中で支払(配当)を受けてもらうことになるほか、未払給料や未払退職金については、後で触れる未払賃金立替払制度の利用が可能です(ただし、この立替払制度は解雇予告手当には利用できません)。

4. 従業員に最後の給料を支給する際の注意点

すでにお話したとおり、廃業当日に従業員に即時解雇を通知したうえで最後の給料を支払うことも問題ありません。

この場合、所得税の源泉徴収、住民税の特別徴収、社会保険料の源泉控除も通常どおり行うことになりますが、狭義の社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)の源泉控除には少し注意が必要です。

社会保険料は、資格を喪失した日の属する前月分まで発生しますが、資格喪失日は退職した日の翌日になります。

そのため、例えば、10月30日に即時解雇した場合には、資格喪失日は翌日の10月31日となり、9月分までの社会保険料がかかるのに対し、10月31日退職した場合には資格喪失日が11月1日となるため、10月分までの社会保険料を徴収する必要があります。

​社会保険料は前月分の社会保険料が当月の給料から源泉控除されていることが一般的ですので(翌月控除)、廃業・即時解雇のタイミングによっては2ヶ月分の社会保険料を最後の給料からまとめて源泉控除する必要があります。

5. 未払賃金立替払制度

即時解雇された従業員は、廃業した会社や個人事業主が労災保険の適用事業所で1年以上の事業実績を備えていれば、未払給料・未払退職金について未払賃金立替払制度による立替払いを受けられる可能性があります。

未払賃金立替払制度とは、事業主が倒産したことで、給料や退職金が支払われないまま退職した労働者に対して、独立行政法人労働者健康安全機構が事業主に代わって、未払賃金の8割を立替払いする制度です。

ただし、立替払いを受けられるのは、破産申立て日(あるいは事実上の倒産認定申請日)の6ヶ月前から2年の間に退職した従業員に限られます。

また、立替払いの対象となるのは、退職日の6ヶ月前の日以降に支払日が到来している給料と退職金です(ボーナスや解雇予告手当は立替払の対象にはならないため注意が必要です)。

立替払いされる金額は、未払賃金総額の8割ですが、従業員の年齢に応じた制限があり、45歳以上の場合は296万円、30歳以上45歳未満の場合は176万円、30歳未満の場合は88万円が上限となります。

この立替払いの請求ができる期間は破産手続き開始決定の日の翌日から2年以内に限られていて、請求には破産手続き開始後に破産管財人の証明が必要となります。

破産する会社・個人事業主としては、従業員に解雇を言い渡す際に、この立替払制度の存在をアナウンスしておくとともに、請求に必要な書類(従業員名簿、賃金台帳、給与規程、タイムカード、出勤簿など)を破産申立て前に取りまとめておくことが望ましいといえます。