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​介護事業者が破産する場合の注意点

有料老人ホームなどを運営する介護事業者が破産する場合には、入居者への配慮や預かっている一時金の管理、廃業したときの届出などが重要な問題となります。
また入居者へできるだけ迷惑をかけないよう、事業譲渡などを検討するよう推奨されます。

この記事では有料老人ホームが廃業する場合の注意点をお伝えします。経営状況が悪化して破産を検討されている場合、参考にしてください。

有料老人ホームなどを運営する介護事業者が破産する場合には、入居者への配慮や預かっている一時金の管理、廃業したときの届出などが重要な問題となります。

また入居者へできるだけ迷惑をかけないよう、事業譲渡などを検討するよう推奨されます。

この記事では有料老人ホームが廃業する場合の注意点をお伝えします。経営状況が悪化して破産を検討されている場合、参考にしてください。

1.利用者へのサービス継続の必要性

有料老人ホームは、入居者が生活している大切な場所です。いきなり運営業者が破産して廃業してしまったら、入居へ多大な悪影響を与えてしまうでしょう。そこで有料老人ホームが廃業する場合には、事業継続を検討する必要性が高いといえます。

以下では具体的にどのように対応すべきか、みてみましょう。

1-1.利用者への状況説明

まずは利用者やその家族へ丁寧に状況説明すべきです。事業者が破産すると知ると、利用者やその家族は大きな不安を抱くケースが多いためです。

説明会などの機会を設けるのも良いでしょう。

1-2.事業譲渡の検討

会社が破産しても事業譲渡をすれば事業を継続できる可能性があります。

できれば破産申立より前にスポンサーとなる買受企業を見つけて事業を継続するのが望ましいといえるでしょう。

ただし破産申立前に適当な譲渡先が見つからない場合、破産申立後に破産管財人が事業運営しながら譲渡先を探すことも可能です。破産申立後にスムーズに破産管財人に事業を引き継げるように、事前に裁判所へ事業譲渡を希望する案件であることを伝えて、必要な対応をしておくと良いでしょう。

1-3.従業員への賃金支払や取引先への支払継続

事業を継続するためには、介護従事者などの従業員の協力が必須です。賃金未払いなどが発生するとすぐに他所へ転職されて、入居者へのサービス提供が難しくなるでしょう。

給食業者やリネン業者などの有料老人ホームの運営に必須の取引業者についても、いったん支払いを停止してしまったら信用を失って取引できなくなる可能性があります。

従業員への賃金や取引先への支払いについては、できるだけ滞りのないように支払いをしましょう。そのためにも、可能な限り速やかにスポンサー企業に事業を引き継いでもらうことが重要となります。

1-4.突然の事業廃止は避ける

事業を廃止するとしても、入居者への影響を最小限にとどめるため突然の廃業は避けるべきです。事前に入居者や家族に説明を行って転所を促したり他所を紹介したりしましょう。

なお事業廃止の際の都道府県への届出にあたっては、事前相談が必要とされています。

この意味でも、突然の破産はできません。

2.入居者との契約や入居一時金の処理

2-1.契約関係の整理

有料老人ホームと利用者との契約形態は、さまざまです。

たとえば以下のような形態のものがあります。

  • 建物賃貸借契約と介護保険サービスが一体となっている
  • 生活支援などのサービスがついている建物賃貸借契約

介護保険サービスについては、外部事業者と別途契約をして提供を受ける必要性がある場合が多数です。

どのような契約形になっているかについての情報は、破産管財人に引き継がねばなりません。有料老人ホーム事業者が破産する場合には、利用者との間の契約や外部事業者との契約がどのようになっているのか整理しておきましょう。

2-2.入居一時金について

有料老人ホームでは、入居者から入居一時金としてまとまった金額を受領しているケースが多数あります。

運営業者が破産して入居一時金が全く返ってこなかったら、利用者やその家族は別の老人ホームに移る際にあらためて入居一時金を用意しなければならず、多大な負担がかかってしまうでしょう。

なお老人福祉法により、有料老人ホームの設置者は、前払いで家賃などの全部や一部を受けとる場合、保全措置を講じなければなりません(老人福祉法29条7項)。

こうした保全措置をとっていれば、破産申立をする場合にも返金が容易になるでしょう。

3.所管庁への対応

有料老人ホーム事業者が破産する場合には、所管庁への対応が必要となります。以下で具体的な方法をお伝えします。

3-1.法定帳簿の作成や保存義務

まず有料老人ホームには、法定帳簿の作成や保存義務があります。

破産する際には、譲渡先や破産管財人に帳簿を引き継がなければなりません。帳簿類がきちんと保存されているか、保存方法や場所を含めて事前に確認しておきましょう。

3-2.変更事項の届出

有料老人ホームが介護保険制度の適用を受けるためには、特定施設入居者生活介護事業所としての指定を受けなければなりません。その指定は6年ごとに更新を受ける必要があります。

また介護事業者の場合、介護保険法上の訪問通所サービスなどさまざまなサービスを提供していて、それぞれについて都道府県の指定を受けている可能性もあります。

介護事業者に届出事項や指定内容の変更があった場合には、それぞれ都道府県知事へ届け出なければなりません。

破産の際にも届出事項や指定事項の変更があったら速やかに届出を行いましょう。

3-3.事業廃止にともなう届出

有料老人ホームなどの介護事業者(特定施設入居者生活介護事業所)が破産する際には、1か月前までに都道府県知事へ届出なければなりません。また入居者への影響が大きいため、廃業の際には事前相談が求められています。

なお介護事業運営者が社会福祉法人の場合、届出先が異なる可能性があります。

規模が小さい場合には市長、事業が2つ以上の都道府県にまたがる場合には厚生労働大臣が所管庁となるので、届出先を間違えないようにしましょう。

4.介護報酬債権やサービス料金の回収

有料老人ホームが破産する際には、介護報酬債権やサービス利用料の回収も必要となります。未払い金があれば、できる限り回収しましょう。

また入居者からのサービス料回収については、外部の回収代行業者へ委託しているケースもあります。その場合には、破産管財人にもその旨引き継がなければなりません。管財人がその業者を利用し続けるかどうか、判断するためです(突然、サービス料金の回収方法が変わると混乱が生じるので、継続して業者を利用するケースが多いと考えられます)。

料金の回収方法についても確認して整理しておきましょう。

介護報酬債権の譲渡担保について

有料老人ホームの介護報酬債権については、譲渡担保に付されているケースも珍しくありません。

有料老人ホームが受け取る介護報酬は国民健康保険団体連合会を通じて事業者に支払われるものですが、事業者がお金を借りる際などに譲渡担保に入れてしまうケースがあるのです。

その場合、譲渡担保の担保権設定が「否認」対象行為とならないか、注意が必要です。否認されると破産管財人によって譲渡担保の効力が失われます。

また否認対象行為とならない場合でも、破産財団への組入れについて債権者と交渉しなければなりません。

5.個人情報の取り扱い

有料老人ホームでは、個人情報を数多く取り扱っているものです。

入居者へ提供するサービスについての帳簿を作成・保存しなければなりません。保存期間は2年間ですが、条例で原則的な保存期間が延長されている例もあります。

個人情報保護法にも配慮しながら帳簿の保存などを行う必要があるでしょう。

有料老人ホームが破産する場合には配慮しなければならない事項が多数あります。迷ったときには弁護士へ相談しましょう。