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民事再生手続きの流れ

1 再生手続申立てから再生手続開始まで

 ⑴ 保全処分・監督命令

民事再生手続開始の申立てが裁判所に受理されたとしても、すぐに開始決定が下されるわけではなく、まずは裁判所が再生手続開始の原因事実(支払不能や債務超過のおそれなど)や条件(再生計画案の可決の見込みがある、不当目的での申立てではないなど)が備わっているかどうかをチェックします。

このチェックが終わって開始決定が出されるまでには通常1~2週間ほどかかりますが、この間に申立てがあったことを知った債権者が取り立て行為に走るおそれがあります。
そこで、通常は再生手続開始の申立てと同時に、弁済禁止の保全処分の申立てを行います(民事再生法30条1項)。

これによって、裁判所から即日で 弁済禁止の保全処分が下され 、申立て前の原因により生じた債務については債権者への弁済が禁止されます(ただし、租税や労働債務などの一部の債務は弁済禁止から除外されます)。

また、保全処分と同時に発令される監督命令で監督委員が選任されて(民事再生法54条1項)、当法人は監督委員による監督下に置かれ、重要な財産の処分などには監督委員の同意が必要となります(「DIP型」)。

これに対して、裁判所が保全処分と同時に管理命令を発令することで管財人が選任され、管財人が経営陣に代わって事業の再建にあたることもまれにあります(「管理型」)。

 ⑵ 利害関係者に対する説明

申立て直後は、この事実を知った従業員や債権者(取引業者、金融機関、リース債権者など)、得意先などに大きな混乱が生じることは避けられません。
そこで、このような混乱を早期に収束させて事業を継続していくために、各利害関係者に対しては、なるべく早期に民事再生手続の申立てに至った原因・経緯、各債権の取扱い、再建に向けての方針、今後の手続きの流れ・スケジュールなどを個別に説明する必要があります。

特に、債権者には、申立て後も必要な取引を継続してもらう必要があったり、再生計画案への賛成に向けて議決権を行使してもらう必要などがあるため、今後の協力について理解を得るために、申立後数日後から1週間以内に債権者説明会を開催するのが通常です。

2 再生手続開始から再生計画案提出まで

  ⑴ 自力再建型かスポンサー型か

民事再生手続の進め方には、大きく分けて自力再建型とスポンサー型の2種類があります。

  • 自力再建型
    過大な債務負担で体力を奪われていた債務者が、債務の圧縮を通じて体力をいくらか回復させることで、もともと持っていた潜在的な収益力を活かして、自助努力により再生計画を実行する形態
  • スポンサー型
    自力再建が難しいものの投資対象としては魅力的な債務者が、スポンサー(大手同業他社、メインバンク、投資再生ファンドなど)による経済的支援(貸付、出資、事業譲渡など)の提供を受けて、スポンサーから提供を受けた資金やノウハウなどを活用することで再生計画を実行する形態

自力再建型の場合には、債権カットを強いられる債権者の理解を得られるだけの事業計画の見直しや収益性の改善が必要になるため、大幅なコストカット(不採算事業からの撤退、人件費の削減、取引先・契約条件の見直し、不必要な契約の解除など)を含む経営の合理化策を軸とした再生計画案を検討して準備していくことになります。

スポンサー型の場合は、スポンサー候補の選定・支援内容の精査が再生計画案の策定に向けた中心的な活動になります。
申立て前の段階でスポンサー候補が内定していない場合で、申立て後に複数のスポンサー候補が現れた場合には、競争入札を実施したうえで、最高価格の支援額を提示した候補をスポンサーに決定します(支援額以外の支援内容の優位性を踏まえて、次点の候補に決定することもまれにあります)。

これに対して、申立て前の段階でスポンサーを内定させておいたうえで申立てを行うこともあります(「プレパッケージ型」)。

プレパッケージ型は、スポンサーが内定していることが安心感につながり、急激な信用不安や事業価値の劣化が抑えられるというメリットがありますが、裁判所や監督委員の関与なしにスポンサー候補が内定しているため、開始後にあらためて監督委員がスポンサーの選定過程の公正性とスポンサーによる支援条件の相当性を調査したうえで、スポンサー候補との契約の履行を認めるかどうかを判断することになります。

そのほか、スポンサー型の一形態として、スポンサーが自らあるいは受け皿会社を通じて、裁判所の許可を受けて事業譲渡を受けることと引換えに、譲渡代価を当法人に支払い、旧法人自体は譲渡対価を債権者に配当することで清算することもあります(「清算型」)。

どのような形態であれ、開始決定後も取引先の協力を得て事業を継続しながら、債務の弁済方法を定めた「再生計画案」を作成していくことが民事再生手続きの一つの特色であることに変わりはありません。

 ⑵ 再生債権の確定手続

再建の方向性を固めるのと並行して、民事再生手続では、再生債務者(当法人)の資産と負債を調査・確定することが求められており、確定した資産と負債の内容をもとに具体的な再生計画案が策定されます。

ここで、民事再生手続きの対象となる債権を「再生債権」といい、再生手続開始前の原因に基づいて発生した財産上の請求権がこれにあたります。

再生債権の確定の作業としては、まず再生手続開始決定時に、裁判所が債権届出期間や債権調査期間を定めるとともに、各債権者には、開始決定の通知書と債権届出書類一式を郵送します。各債権者は債権届出書類に必要な事項を記入したものを裁判所に送り返して、各自の債権を届け出ます。

そして、再生債務者が、各債権者からの届出の内容を踏まえた認否書(届出のあった再生債権の内容を認めるかどうかを記載した書面)を作成して、これを裁判所に提出します(なお、届出がない債権でも、再生債務者のほうでその存在を把握しているものについては、認否書に記載する義務があります)。

あわせて、この認否の内容を債権者が確認できるように、認否書の写しを再生債務者の主たる営業所又は事務所に備え置いて閲覧できるようにするとともに、債権者からの求めに応じて当該再生債権に関する認否部分を記載した書面を交付します(認否で認めなかった届出債権者に対しては、任意で認否の結果の通知書を送ることもあります)。

債権者は、認否の結果に対して異議を述べることができる一方で、再生債務者が認めていて、債権者からも異議が出なかった再生債権については、その内容が確定します。

債権調査において再生債務者が認めなかった債権や、異議を出された債権は、再生債務者や異議を述べた債権者を相手方として「査定の申立て」やそれに引き続く「異議の訴え」を通じて、再生債権の額や内容を最終的に確定させることになります(異議を出された債権について、再生手続開始前から訴訟が係属していた場合は、係属していた訴訟手続きについて「受継の申立て」をして、当該訴訟手続きの中で確定させます)。

 ⑶ 財産評定の手続

再生債務者は再生手続開始後遅滞なく、その保有する財産の価値を評定しなければいけません(民事再生法124条1項)。この手続きを財産評定といいます。

財産評定は、不動産鑑定士や公認会計士の協力を得ながら、各財産について再生手続開始時点での処分価額を評価基準として行うのが原則ですが、例外的に必要がある場合に継続企業価値(事業を継続することを前提とした場合の当該財産の価値)を評価基準として行うこともあります(民事再生規則56条1項)。

そして、財産評定の手続が完了すれば、直ちに財産目録と貸借対照表を作成して裁判所に提出します(民事再生法124条2項)。
また、再生債務者は、再生手続開始後遅滞なく、再生手続開始に至った事情や業務・財産に関する状況などを記載した報告書(これを125条報告書といいます)を提出する必要もあります(民事再生法125条1項)。

再生債務者が行った財産評定は、監督委員(及びこれを補助する公認会計士)によるチェックを受けることが予定されています。

 ⑷ 別除権協定の締結

再生債務者が保有する財産のうち、財産的価値の高いものには担保権が付いていることが通常ですが、この担保権の行使は、民事再生手続中であっても自由に実行することが可能です。このような担保権のことを「別除権」といいます(民事再生法53条)。

しかし、工場や設備機械などの事業の遂行にとって重要な資産の上に担保権が設定されている状態で、自由に担保権が実行できる状態のままだと、いつこれらの重要な財産が失われるかもしれず、確実性をもった再生計画を策定することはできません。

そこで、再生債務者は、監督委員の同意を得た上で別除権者との間で別除権協定を締結し、事業の継続に必要な財産を確保します。

別除権協定では、別除権者との間で、担保目的物の評価額と弁済方法について合意したうえで、弁済期間中、担保権の実行を猶予してもらい、弁済が完了した段階で担保権を解除することを約束してもらうことになります。
別除権協定により別除権で満足されない不足額も確定することになり、別除権者はこの不足額の限度で、民事再生手続きに参加できることになります(民事再生法88条)。 

3 再生計画案提出から再生計画の認可まで

 ⑴ 再生計画案の提出・付議決定

民事再生手続きの中で、再生債務者が作成する経営再建計画のことを再生計画といい、再生債務者は、再建の方向性や確定した資産と負債の内容を踏まえて、再生計画案の内容(今後の事業計画、再生債権者の権利変更の内容・返済スケジュールなど)を細部に至るまで詰めます。

そして、再生債務者は、提出期限までに再生計画案を完成させて裁判所に提出します(民事再生法163条1項)。

提出された再生計画案は、監督委員が不認可事由(民事再生法174条2項)の有無を調査したうえで、裁判所に調査報告書(意見書)を提出し、これを受けた裁判所が、再生計画案を 届出再生債権者による賛否の決議に付する旨の決定(「付議決定」)をします(民事再生法169条1項)。
この付議決定を通じて、決議の方法(債権者集会による決議、書面による決議、両者の併用型のいずれか)も定められますが(同169条2項)、集会型か併用型が採用されることが一般的です。

 ⑵ 再生計画案の決議

その後、付議決定の際に定められた決議の方法に従い、議決権を有する届出再生債権者が、再生計画案に対する賛成または反対の議決権を行使します。
債権者集会では、再生債務者等から再生計画案の説明や監督委員による調査報告書の説明などを経て、議決を実施しその結果が集計されます。

集計の結果、①出席議決権者の頭数の過半数かつ②届出再生債権者の議決権総額の2分の1以上の賛成が得られた場合には、再生計画案が可決となります(民事再生法172条の3第1項)。
なお、上記①②の要件のうち一方のみが充たされた場合は、債権者集会を再度開催して再集計を実施します(民事再生法172条の5)。

上記①②のいずれも充たさない場合で、期日の続行について出席議決権者の過半数で出席議決権者の議決権総額の2分の1を超える合意が得られない場合には、再生手続は廃止とされて終了し、破産手続に移行します(民事再生法191条3号、同250条1項)。

 ⑶ 再生計画の認可決定

可決された再生計画について 不認可事由(民事再生法174条2項) がなければ、裁判所により、再生計画認可決定が下されます(民事再生法174条1項)。
認可決定から約2週間後に認可決定の官報公告がなされ、そこから不服申し立てがないまま2週間が経過することで認可決定が確定し効力が生じます(民事再生法176条)。

再生計画の効力発生により、届出再生債権等の権利変更の効力およびそれ以外の再生債権の免責の効力が生じることとなります(民事再生法178条1項、同179条1項)。

4 再生計画の遂行と再生手続の終結

再生計画の確定後、再生債務者は、監督委員による監督のもとで、確定した再生計画の各条項に従い、再生債権者に対して権利変更後の再生債権の弁済を行うなど、再生計画を遂行します。

この間に監督委員が、再生計画の不履行の事実を把握した場合には、再生計画の変更や廃止を申し立てることで対応します(民事再生法187条1項、同194条)。

そして、再生計画の遂行が完了した時または再生計画認可の決定が確定した後3年間を経過した時に民事再生手続は終結し(民事再生法188条2項)、監督委員による監督も終了します。
ただし、再生計画で3年を超える弁済期間を定めた場合には、その後も弁済自体は継続していく必要があります。