小売店(スーパーマーケット、アパレル販売店、書店、薬局など)や卸売店は食品や季節ものの衣類などを扱っているため、在庫品の処分時期が遅れると換価価値が大きく下落してしまうおそれがあります。
破産手続きの開始後に破産財団が多額の不良在庫を抱えたり安値での売却を強いられたりすることがないように、在庫品の調整管理や売却先候補の下調べなどをしておく必要があります。
今回は小売業者や卸売業者が破産する場合の注意点を弁護士がお伝えします。破産を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
小売店(スーパーマーケット、アパレル販売店、書店、薬局など)や卸売店は食品や季節ものの衣類などを扱っているため、在庫品の処分時期が遅れると換価価値が大きく下落してしまうおそれがあります。
破産手続きの開始後に破産財団が多額の不良在庫を抱えたり安値での売却を強いられたりすることがないように、在庫品の調整管理や売却先候補の下調べなどをしておく必要があります。
今回は小売業者や卸売業者が破産する場合の注意点を弁護士がお伝えします。破産を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
小売業や卸売業では、倉庫を利用しているケースが大多数です。その場合、倉庫内の管理が重要となります。
まずは倉庫内に所在する在庫品の種類や数量などを確認しましょう。帳簿類がない場合、在庫品リストを作成すべきです。
また在庫品があっても破産会社に所有権がない場合もあります。たとえば委託販売契約や消化仕入契約によって販売している場合、在庫品の所有権は小売店である破産会社に移転しません。どこに所有権がある在庫品なのかも確認しておきましょう。
倉庫のシャッターの開閉や食品の冷蔵保存などのため、倉庫内の通電を確保しなければならないケースが多数あります。電気系統を止められないように注意して対応しましょう。
倉庫が自社倉庫か他社の倉庫なのかも確認しなければなりません。自社倉庫なら在庫品を入れたままにしておいても問題は大きくなりにくいですが、他社倉庫の場合には早期に明渡しが必要となるからです。他社倉庫の場合、自社倉庫のケースより倉庫内の在庫を早めに売却しなければなりません。
破産手続き開始決定時に在庫品が残っていたら、破産管財人が在庫品の換価を進めます。
ただし、不当な廉価での換価でなければ、その前に自社で換価できるものは換価しておいてもかまいません。残った在庫については管財人にスムーズに引き渡しができるように管理しておきましょう。
なお債権者が引き渡しを求めてきても、安易に応じず弁護士へご相談ください。
食品を扱っている場合には、消費期限などがきちんと管理把握されていないと破産手続きの中での売却処分に支障が生じかねません。
また、日持ちしない在庫品については保管費用や廃棄費用が発生する前に早期に処分する必要があります。
そのため、保管場所や消費期限、種類数量の確認といった在庫管理を適切に行ったうえで、債権者や従業員によって無断で持ち去られないような措置(警備契約の継続など)をとっておきましょう。
会社が破産する場合、従業員は解雇しなければなりません。
ただし卸売業者や小売業者が破産する場合、元従業員との関係維持が必要です。
倉庫内でのフォークリフト作業に対応できる人材を確保しなければなりませんし、在庫品を売却するにも売却ルートや取引先との関係などを把握している元従業員の協力が必要となるからです。
解雇するとしても、関係が悪化しないようにして、可能な範囲で在庫品の管理や換価に協力してくれるよう依頼しましょう。
工場作業などのために派遣労働者を受け入れている場合、派遣労働者の雇用者は派遣元の会社になります。破産会社としては、解雇や給与支払いなどの対応をとる必要はありません。
未払金がある場合、破産手続き内で派遣元会社を債権者として扱えば足ります。
売掛金がある場合には、なるべく回収しておきましょう。その方が、破産手続き開始決定後の管財業務がスムーズに進みます。
特に少額で多数の購入者がいる場合、回収に時間がかかります。自社で回収できる部分は回収して保管しておくと良いでしょう。
海外取引先がある場合、破産会社名義の銀行口座を残しておく必要があります。そうでないと、入金を受けづらくなって管財業務に支障が出る可能性があるからです。
取引先を管財人に引き継ぐ際、管財人に対して海外取引先がある旨を伝え、普段送金を受けていた口座を伝えると良いでしょう。
自社倉庫を所有している場合、破産会社が処分していなければ管財人が売却手続きを進めます。変電設備(キュービクル)や化学物質等の危険物が存在すると、管財人に注意を促さなければなりません。
各倉庫内にこういったものが存在しないか確認し、ある場合には管財人に引き継ぎましょう。
産業廃棄物がある場合も同様です。事前に自社で倉庫を売却する場合には関係機関と調整しながら処分方法を慎重に検討しなければなりません。管財人に引き継ぐ場合にはどこの倉庫内にどういった産業廃棄物があるのかを伝えましょう。
卸売業者や小売業者が破産しても、状況次第では元代表者や従業員が同様の事業を継続することが可能です。事業継続の希望を持っているのか、事業を継続することに現実性があるのかなど、破産の申立て前に検討しておきましょう。
迷ったときには破産申立てを依頼する弁護士へ相談してみてください。
会社が破産する際には、各種の契約処理が必要となります。
どういった取引先とどのような契約を締結しているのか、洗い出してリストアップしましょう。契約関係の一覧を管財人へ伝える必要があります。
以下で確認しておくべきポイントをお伝えします。
まずは発注から納品までの流れを確認しましょう。流れの中で複数社が関与するケースも多いので、見逃さないように注意が必要です。
卸売業や小売業の場合、破産会社を通さずに納品(伝票上の処理)をするケースも少なくありません。実際に納品されているかどうかもチェックする必要があります。
公営市場の場合、市場内取引をしている可能性があります。組合などに状況を確認して結果を管財人に引き継ぎましょう。
業界特有の組合に加入している場合には、組合から貸付を受けていたり出資金を出していたりするケースが多々あります。
貸付を受けているなら組合が債権者となりますし、出資金を出していたら財産扱いとなる可能性があります。組合との関係についても確認して管財人へ引き継ぎましょう。
自社や他社の登録商標の有無や使用状況について確認しましょう。
たとえば衣料品販売の場合、ブランド名を商標登録しているケースがよくあります。商標権も財産的価値があり換価の対象になる可能性があるので、管財人へ報告しましょう。
一方、他社の商標をライセンスしている場合、破産手続き開始決定とともにライセンス契約が終了してしまうケースが多数です。そうなると、在庫品があっても販売できなくなってしまう可能性があります。
商標を利用している場合、自社商標なのか他社商標なのかも確認しておく必要があります。
顧客との間でクレジット取引をする場合、クレジット会社へ営業保証金を差し入れているケースが多数です。その場合、営業保証金を取り戻せるので、管財人に報告しなければなりません。クレジット契約を利用している場合には営業保証金の有無や金額を確認しておきましょう。