製造業者や加工業者が破産する場合、在庫品や価値のある工作機械を適切な価格で売却しなければなりません。
そのためには在庫品や機械などの価値を低減しないように、破産の準備を進める必要があります。また従業員を解雇した後の元従業員との関係も重要です。
この記事では製造業や加工業者が破産する場合のポイントや注意点を弁護士がお伝えします。破産を検討している製造業者、加工業者の方はぜひ参考にしてみてください。
製造業者や加工業者が破産する場合、在庫品や価値のある工作機械を適切な価格で売却しなければなりません。
そのためには在庫品や機械などの価値を低減しないように、破産の準備を進める必要があります。また従業員を解雇した後の元従業員との関係も重要です。
この記事では製造業や加工業者が破産する場合のポイントや注意点を弁護士がお伝えします。破産を検討している製造業者、加工業者の方はぜひ参考にしてみてください。
製造業の場合、多数の在庫品や原材料を保有している会社が少なくありません。
これらの動産は、破産手続きに入ったときに破産管財人によって換価されます。そのために破産会社は破産管財人に引き渡すまで、価値を維持しなければなりません。
たとえば加工食品を取り扱っている場合、適切に管理しなければ価値が失われてしまう可能性もあるので、品質を維持できるように注意しましょう。
具体的には以下のような管理を行います。
まずは工場内の通電を確保することが重要です。
特に要冷蔵の食品などを製造・加工している場合には電気系統の確保が重要です。食品や原材料を腐敗させないよう適切に管理しておかなければならないためです。
工場のシャッターを開けるため、また換価の際に機械の稼働を確認するためなどに電気が必要となるケースもあります。
また製造業や加工業では事業を停止してからも一部事業を継続しなければならない場合があり、そういったケースでも電気系統の確保が必須です。
破産することが決まっても、電気系統を止められないように注意して対応しましょう。
工場内に仕掛品や製品などが残っていたら、破産手続きで破産管財人によって売却されます。工場内の機械設備なども同様です。
そのためには、仕掛品や製品、機械設備などの所有者を確定し、価値を適切に評価しなければなりません。
工場内の仕掛品、製品、機械設備については保管場所や消費期限、種類や数量などを確認して在庫管理を適切に行いましょう。
また債権者や従業員によって無断で持ち去られないようなに対応しておく必要もあります。たとえば警備契約の継続や強化などを行うと良いでしょう。
債権者が材料などの返還を求める権利を主張してきたとしても、安易に返還には応じずに弁護士に確認してください。
会社が破産する場合、従業員は全員解雇することとなります。
ただし製造業者が破産する場合、元従業員による協力が必要となるケースがよくあります。
たとえば工場内に残っている仕掛品などを適正な価格で売却するためには、仕掛品の出来高査定や製品の販売ルートなどに精通している従業員の協力が不可欠となるでしょう。
破産することが決まったからといって、従業員との関係を不用意に悪化させないように注意すべきです。
未払い賃金については未払い賃金立替制度を案内する、次の就職先を紹介するなど、従業員がなるべく困らないように対応しましょう。
なお派遣労働者の場合、派遣元の会社が給料の支払などを行うので、破産会社が解雇などの措置をとる必要はありません。派遣会社を債権者として取り扱えば済みます。
製造業の業種によっては労働組合の勢力が非常に強いケースがみられます。そういった業種で破産する場合には、労働組合との交渉や労使関係の調整が必要となります。
たとえば組合事務所の明け渡しを求める際などにも交渉が必要となるケースがありますし、不当労働行為への救済を申し立てられてしまう場合もあります。
破産申立前の労働組合との交渉状況などをまとめておいて、破産管財人にスムーズに引き継げるように準備しておきましょう。
製造業者や加工業者が破産する場合には、財産を破産管財人に引き渡さなければなりません。
引き渡した財産は破産管財人によって換価され、債権者へ配当されます。
スムーズな引き渡しができるように、以下のような財産を把握しておきましょう。
製造業では製品についての売掛金を有しているケースが多々あります。取引先などへの売掛金は財産として扱われます。未回収の売掛金があれば、破産管財人が権利を行使して回収することになります。
仕掛品がある場合には、各仕掛品の状況に応じて適切に評価されなければなりません。
また売掛金債権を行使すると、取引先から検収費用や各種の増加費用に関する損害賠償請求権などとの相殺を主張されるケースもあります。
破産申立前にできるだけ、以下のように売掛金の状況を整理して把握しておきましょう。
製造業や加工業では機械設備を所有しているケースも多いでしょう。
機械設備の場合、まずは権利の帰属(所有者)を明らかにしなければなりません。
たとえばリース物件やレンタル物件の場合、破産会社の所有ではないので所有者へ返還しなければなりません。
また顧客からのオーダーメイドで対応している場合、顧客自身が機械を用意して工場内に設置しているケースもあります。
反対に、破産会社が下請業者に工場機械を貸し出しているケースもあり、そういった事例では下請け先へ機械設備の返還を求めなければなりません。
機械設備については、以下のような情報を整理して把握しましょう。
製造業では、工場などの不動産を所有しているケースもよくあります。
所有不動産は売却して換価するのが原則ですが、工場団地に所在する場合など、破産会社に独断では不動産を売却する権限が認められないケースもあります。その場合、事業協同組合などと協議をしなければなりません。
また工場開設に際して自治体から補助金を受け取っている場合、売却すると自治体から補助金の返還を求められるケースもあります。
所有不動産については、以下のような情報を整理・把握しておきましょう。
製造業や加工業では、特殊な技術や特許権などを有している場合もよくあります。
こうした知的財産権も価値のあるものとして換価の対象になります。
どういった技術や特許権などを有しているのか、一覧にしてリストアップしておきましょう。
製造業では、営業用の車両を有しているケースも多数あります。車両も価値のある財産として換価・配当の対象になります。
ただ材料や製品の搬送に使用されていた場合などには、老朽化が激しくなっている例もみられます。
車両の種類や登録年数、所在や台数などを適切に把握して破産管財人へ引き継ぎましょう。
製造業では、必要な什器備品などが少ない場合、別法人の設立などによって事業継続が可能となるケースもあります。その場合、継続を希望するのか、継続可能性のある業種なのかなど検討が必要となります。