農業や畜産業者が破産する場合には、農地の売却や事業継続の有無、作物や家畜などの販売に際して注意が必要です。たとえば農地は通常の不動産のように簡単には売却できません。農地法上の制限がかかるためです。
この記事では農業や畜産業者が破産する際の注意点をお伝えします。
経営状況が苦しくなって破産を検討している場合には、ぜひ参考にしてみてください。
農業や畜産業者が破産する場合には、農地の売却や事業継続の有無、作物や家畜などの販売に際して注意が必要です。たとえば農地は通常の不動産のように簡単には売却できません。農地法上の制限がかかるためです。
この記事では農業や畜産業者が破産する際の注意点をお伝えします。
経営状況が苦しくなって破産を検討している場合には、ぜひ参考にしてみてください。
農業や畜産業者が破産する際には、作物の栽培や家畜の飼育を突然やめることができません。破産申立てを決めた後も、一定期間事業を継続しなければならないでしょう。事業譲渡によって他社に事業を引き継いでもらえる可能性もあります。
そのためには、以下のような対応が必要となります。
作物や家畜の生育に不可欠な機械がある場合、機械が突然止まると作物や家畜の支障が生じます。そういった事態を避けるため、通電を確保する必要があるケースが多数です。
通電が必要な場合、破産を決定しても電気の契約を終了させないように注意しましょう。
農場では家畜のための飼料、作物のための肥料、農薬などを保管しているケースもよくあります。廃業や破産の混乱に乗じてこれらのものが盗難に遭わないよう、厳重に管理しましょう。
農場が破産する場合には、産業廃棄物についても注意が必要です。たとえば大量の家畜の糞が農場に存在する場合もありますし、土壌汚染が起こっている可能性もあります。
産業廃棄物については処理方法が決まっているので、自己判断で勝手に処分してはなりません。農場内に産業廃棄物があるかどうかを確認し、ある場合には適切な方法で処理を進めましょう。
農業や畜産業者が破産する場合には、作物の栽培や家畜の飼育を継続して行わなけばならないケースが多々あります。
そのためには、現場で作物の栽培や家畜の世話を行う従業員による協力が必須となるでしょう。
農場や畜産業者が破産する際には、いきなり従業員を解雇すべきではありません。状況に応じて必要な従業員を確保する必要があります。どの程度の人員が必要か検討し、事案に応じて残す従業員を選定しましょう。
農場では作物の栽培や家畜の飼育に不可欠な物品を仕入れている場合もよくあります。そういったケースでは、いきなり供給を止められると事業継続が難しくなりますし、作物等の換価価値も大きく下がってしまうおそれがあります。
破産するとしても取引先との関係を悪化させず、供給を確保する方法を早めに検討しましょう。
農業や畜産業者が破産する場合には、資産を売却する必要があります。
具体的な売却措置は破産管財人が行いますが、スムーズに引き継ぐためにあらかじめ対処方法を知っておきましょう。
以下では、農業や畜産業者の資産売却方法における注意点をみていきます。
農場には作物や家畜が残っているケースが多数ですが、こうした作物や家畜はいずれ売却しなければなりません。そこで、どのような販売ルートがあるのか、調べておきましょう。
また家畜や作物に「集合物譲渡担保」がつけられているケースもあります。その場合、家畜や作物を売却するためには債権者と協議しなければなりません。
集合物譲渡担保がついている家畜などがないか、事前に調べてリストアップしておきましょう。
さらに販売までの間、作物や家畜の価値が低下しないように生育や世話を行う必要があります。破産するとしても、こういったものを突然放置しないように注意してください。
農場には大規模な機械が置かれているケースもよくあります。その場合、1つ1つの機械を単独で売ることも可能ですが、セットで売却する方がスムーズで値段もつきやすいでしょう。
個別に売却する方法だけではなく、全体を一体として売却する方法を検討してみてください。
農場では物件をリースしているケースもよくあります。リースしている状態で破産すると、リース物件はリース債権者によって引き揚げられます。
引き揚げをスムーズに進められるように、どこにどのようなリース物件があるのか把握しておきましょう。全体を確認して一覧表を作成しておくようおすすめします。
農業や畜産業者は農地を所有しているケースも多いでしょう。その場合、いずれ農地も売却しなければなりません。
農地を売却する際には、農地法による制限を受けます。
農地法では農地を売買する際、農業委員会や都道府県知事の許可が必要とされています。許可を得ずに行った農地の売買は無効になってしまうので、勝手に売買しないように注意しましょう。
また農業委員会や都道府県知事の許可を受けるためには一定時間がかかります。
一般の不動産のようにすぐに簡単に売れるわけではありません。
農地の売却先は、自分で探す必要がありますが、JA(農協)が買受先を紹介してくれるケースもあります。心当たりがない場合には一度、相談してみると良いでしょう。
農地としての売却が難しい場合には、宅地等への転用を検討しましょう。
宅地にしてしまえば、農地法による制限を受けずに売却できます。流動性も高くなりますし、価格も高額になるケースが多いでしょう。
ただし全ての農地を転用できるわけではありません。
農地を転用する際には、事前に都道府県知事や指定市町村等による許可も必要となります。
手続きに手間がかかるので、転用を希望する場合には早めに弁護士へ相談しましょう。
農地を賃借して農業経営している場合には、農地を賃貸人へ返還しなければなりません。
複数拠点で農業経営している場合などには、どこの農場を誰から賃借しているかなどの情報を整理しておきましょう。
農場内に大量の家畜がいる場合、農場を売却する際に産業廃棄物処理が問題となるケースが多数です。土壌汚染を阻止する方法も検討しなければなりません。
売却や処分の際には行政庁と協議の上、適切な方法を採択する必要があります。
自己判断で勝手に農場を閉じてしまわないように、注意しましょう。
農業や畜産業者が倒産する際には、事業を継続する方法についても検討するようおすすめします。
事業者が倒産するとしても、必ず破産して事業を廃業しなければならないとは限りません。
私的整理や民事再生を利用すれば、自力で事業の再建もできます。まずはこういった別の債務整理手続きで解決できないか、検討してみるとよいでしょう。
また破産するとしてスポンサー企業を見つけて事業譲渡を行い、事業を継続できる可能性があります。事業譲渡すると、事業の運営者は変わりますが農場を残すことができて、作物や家畜に対する影響を最小限に留められます。
事業譲渡によって事業を継続するには、事業の買受人が必要です。心当たりの同業事業者がいる場合には、破産管財人に引き継ぎを行いましょう。
なお破産会社自身が事業譲渡の手続きをしなくても、破産管財人がその判断によって事業譲渡を行うケースもあります。
農業や畜産業者が破産する際には、不動産売却の際に農地法による制限を受けるなどさまざまな特殊性があります。迷ったときには弁護士へ相談しましょう。