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​理容店・美容院(ヘアサロン)が破産する場合の注意点

「理容師や美容師が破産すると、仕事ができなくなるのでは?」
と心配される方が少なくありません。

確かに破産を申し立てると、一定期間は特定の職業(警備員、保険外交員、宅地建物取引士など)に就けなくなります。ただしヘアサロンを営む会社や理容師、美容師が破産しても、免許には影響がありません。仕事は今まで通り続けられるので、安心しましょう。

また理容師や美容師が利用するハサミなどの道具は「技術者の業務に欠くことができない器具」(民事執行法131条6号)なので「差押禁止財産」とされ、破産手続きが開始されても手元に残しておけます。

ヘアサロンを営む会社の代表者や理容師、美容師個人が破産した場合には新たな借り入れはできなくなりますが、他のヘアサロンなどで引き続き美容師として働くことが可能です。

今回は理容師や美容師、ヘアサロンを営む会社が破産する際の注意点を弁護士がお伝えしますので、債務がかさんでしまった場合にはぜひ参考にしてみてください。

「理容師や美容師が破産すると、仕事ができなくなるのでは?」
と心配される方が少なくありません。

確かに破産を申し立てると、一定期間は特定の職業(警備員、保険外交員、宅地建物取引士など)に就けなくなります。ただしヘアサロンを営む会社や理容師、美容師が破産しても、免許には影響がありません。仕事は今まで通り続けられるので、安心しましょう。

また理容師や美容師が利用するハサミなどの道具は「技術者の業務に欠くことができない器具」(民事執行法131条6号)なので「差押禁止財産」とされ、破産手続きが開始されても手元に残しておけます。

ヘアサロンを営む会社の代表者や理容師、美容師個人が破産した場合には新たな借り入れはできなくなりますが、他のヘアサロンなどで引き続き美容師として働くことが可能です。

今回は理容師や美容師、ヘアサロンを営む会社が破産する際の注意点を弁護士がお伝えしますので、債務がかさんでしまった場合にはぜひ参考にしてみてください。

1.リース物件・レンタル物件の所在と状態の確認

理容室や美容室では、シャンプー台やローラーボールなどの設備をリースによって使用しているケースがよくあります。その場合、廃業のタイミングにあわせて設備がリース会社により引き揚げられることがほとんどです。引き揚げに対応するため、廃業を決める前にリース物件の所在や状態を確認しておきましょう。

また、キャッシュレス決済に用いる端末をクレジットカード会社などからレンタルしている場合、廃業後にレンタル元の会社へ連絡をしたうえで返却する必要があります。使用していない端末がある場合にも返却は必要なので、端末の所在を確認しておきましょう。

2.賃借物件の明渡しの準備とスケジュールの確認

理容室や美容室の店舗が賃借物件の場合、廃業したら明け渡しをしなければなりません。

明け渡さない限り賃料や賃料相当額の損害金が発生してしまいます。

廃業後、できるだけ早期に大家に物件を明け渡せるように準備を進めましょう。

2-1.原状回復義務について

賃貸借契約終了にともなって物件を大家に返却する際には、物件を原状(借りたときの状態)に戻さなければなりません。これを賃借人の「原状回復義務」といいます。

居抜きで理容室や美容室を開始した場合であっても原則として原状回復を行い、もとのスケルトンの状態にして物件を返還しなければいけません。

店舗物件の原状回復には多額の費用がかかるケースが多数あります。原状回復費用をあらかじめ確保しておくなどして、大家との間でトラブルが起こらないように準備しておきましょう。

また「居抜き」の状態での借受希望者がいれば、原状回復にかかる費用を大幅に削減できます。同業者などを中心に、居抜きでの借受希望者を探してみてください。

2-2.保証金について

賃貸物件を明け渡すと、保証金が返ってくるケースが多いでしょう。保証金も破産者の財産なので、破産手続き開始決定後には破産管財人に引き渡さなければなりません。

勝手に処分せずに預金口座などに入れて保管しておきましょう。

ただし従業員の給料など、必要な支払いに充ててもかまいません。

保証金の使い途や保管方法について不安がある場合には、自己判断せずに弁護士へ相談するようおすすめします。

3.設備の売却について

自社でシャンプー台やローラーボールなどの設備を所有している場合、そういった資産は破産管財人の手により、破産手続きで換価されることになります。

破産管財人にスムーズに引き継ぎができるように、あらかじめ、どういったものがあるのか設備類をリストアップしておきましょう。

設備や備品は、破産手続きの申立て前に自分で売却することもできます。ただし、適正な売却先に相当な対価で売却する必要があるため、主な売却先は理容室や美容室を営む同業者となるでしょう。買受希望者がいないか下調べして、売却可能であれば適正価格で売却しましょう。

4.廃業すると、届出をしなければならない

理容師や美容師が破産によって廃業すると、理容室や美容室の開設者はすみやかに都道府県知事へ届け出なければなりません(理容師法11条2項、美容師法11条2項)。

届出をしなかった場合、30万円以下の罰金が科される可能性もあります(理容師法15条2号、美容師法18条2号)。

廃業の手続きが終わったら、早めに都道府県へ届出をしましょう。

5.破産しても理容師や美容師の免許に影響はない

理容師や美容師の資格をお持ちの場合、手に職があるので自己破産しても資格を活かして働きたい方が多数いらっしゃいます。自分のサロンを閉じたとしても、他店に働きに出る方法があります。それにもかかわらず自己破産によって仕事ができなくなると、大きな支障が生じるでしょう。

自己破産すると理容師や美容師の免許に影響が及ぶのでしょうか?

自己破産には「資格制限」というルールがあります。資格制限とは、破産手続き中に一定の資格や職業が制限されることです。

資格制限の対象となる場合、破産手続開始決定時から免責決定が確定するまでの間、制限される仕事ができなくなります。たとえば警備員や生命保険外交員、弁護士や司法書士、宅建士などの仕事は資格制限の対象になるので、自己破産の手続き中には続けられません。

一方、理容師や美容師の免許については、資格制限の対象になっていません。よって自己破産の手続き中でも問題なく資格を活かした仕事ができます。

もちろん自己破産の手続きが済んだ後に仕事を再開してもかまいません。

6.ハサミなどの道具は差押禁止財産

理容師や美容師の方は、ハサミなどの仕事道具を持っているでしょう。

こうした仕事道具は自己破産によって没収されてしまうのでしょうか?

確かに自己破産をすると、生活に必要な最低限を超える資産が失われます。

たとえば家、預金や保険、自動車などは失われると考えるべきです(ただしそれぞれの資産について一定額までは残せるケースが多数となっています)。

ただし理容師や美容師のハサミのような、仕事に不可欠な道具については「差押禁止財産」に該当するので自己破産手続きによっても換価の対象になりません。

つまりハサミなどの道具は、自己破産しても持ち続けることが可能です。

以上のように理容師や美容師の場合、破産しても資格が制限されず道具も使い続けられるので、仕事を続けやすい特徴があります。

自己破産後も理容師や美容師として働きたい方も、自己破産を躊躇する必要はないといえるでしょう。

7.事業を継続できるケースもある

理容師や美容師の場合、破産しても自分の手で事業を継続できる可能性があります。

破産手続きではおおむね99万円程度までの資産については生活に必要な最低限のものとして手元に残せるからです。

たとえばローラーボールなどの資産の合計評価額が99万円を下回っていれば、そういった資産をすべて手元に残して事業を継続することも可能です。

設備が自社所有で古くなっている場合などには価値が低くなり事業を継続しやすい傾向があります。自分の手による事業継続を希望される方は、一度弁護士に相談してみてください。

8.従業員の給料は支払わなければならない

従業員を抱えている場合、破産しても従業員の給料は支払わなければなりません。特に個人事業の場合、従業員の給料は「非免責債権」となるので破産後も支払わねばなりません。

つまり個人営業の場合、自己破産をしても給料は免除されないので注意が必要です。法人の場合には法人が破産するとともにすべての負債が消滅します。